週も終わりの金曜日。今日3つのレッスンをこなせば、明日は土曜日。Kのレッスンがあるけど、週末だ。ちょっとうれしい気分で目を覚ましたはずなのに、なぜか身体が重い。授業の準備も済み、お弁当も作ってあるのに、出かけていくのがなんだか億劫。「今日は出かけたくないな」こんなこと言った事がないのに、サーミーにこぼしていた。なんだか体の調子がよくないのだ。
昼前から1レッスン。そのレッスンが終わる頃、ふと気がついたら右脇腹と肩が痛い。呼吸する度に痛む。よく起こる脇腹痛とは違って、肩まで痛くなっている。30分しかない繋ぎの時間に昼ごはんを食べようとするが、ご飯を3口ほどしか食べられない。さっきまで聞こえるほどおなかが鳴っていたのに。痛みは治まらないし、気分もすぐれない。一時は2つ目のレッスンを中止させてもらおうかと思い生徒の家に向かったが、家の前まで来たらなんだかだいじょうぶのような気がしてレッスンをすることにした。ところが部屋に入って、この暑さなのに寒気を感じ始め、右脇腹と肩の痛みは呼吸するたび、話すたびに、強くなる。何とか授業に専念した。幸い、わりあい簡単な課だったこと、のみ込みのいい生徒だったこともあって、何とか切り抜けた。今日はもうひとつレッスンがあるのだが、とうてい無理。どこがいけないのか、この痛みをなんとかしてもらわなくては。日頃医者嫌いの私でも、我慢できない痛みだ。最後のレッスンは、申し訳ないけどこちらからキャンセルして、病院へ行くことにした。
レッスンは離れた町で行っている。病院はやはり家の近くのあの大病院のほうがいいだろう。これから小1時間かけて帰る途中にも病院がある。せっかく保険証がカードになったというのに、携帯していないので、寄るわけにも行かない。それにもし、入院なんてことになったら、なんといっても近い方がいいだろう。
痛みに耐えながら、事故だけは起こさないようにして、Sek LOSO の声に助けられながら、家に着いた。その頃時刻は3時過ぎ。まだ外来受付はやっているだろう。サーミーに送ってもらって外来へ向かった。
外来窓口で説明すると、それなら救急外来へ行ってくださいと言われ、痛みをこらえながら歩いて、別の建物の救急外来へ。こんなことなら初めからこちらへ送ってもらえばよかった。
この頃には痛みはピークで、呼吸するたびに痛くて、歩くことも話すことも容易ではなかった。熱をはかると38度。私にしては高熱だ。ベッドに寝かされ点滴が始まったが、寝ている状態がまた痛いし、向きを変えたり、起き上がったりなど、一人ではできないうという体たらく。救急の医師や看護師が来て、症状を聞いたり処置をしたりしてくれるのだが、私の身体にいったい何が起こっているのか、誰一人としてわからない様子。
右脇腹の痛み、右肩の痛み、高熱、これらの症状から、「胆石か胆嚢炎が疑わしいですね」という声が遠くで聞こえる。どんな順番だったか覚えていないが、点滴の他に、胸とお腹のレントゲン、お腹の血管造影、エコー診断2回、血液採取を受けた。「血液検査の結果、肝臓には異常がないようですよ」「エコーでは石がうつらないんだけど・・」痛みに耐えながら聞いていた。
消火器内科の医師が来て、エコーで見ても胆石の可能性はないし、原因は何なんでしょうね。何か思い当たることはありませんか?なんて聞く。以前からしょっちゅう痛くなる右脇腹。はじめに「胆石」かも知れないと言われた時はなるほどそれならいつもの右脇腹の痛みも納得できると思いもしたが、「胆石」で入院していた友人から聞いた痛みは並大抵のものではなかったから、これが「胆石」であるはずはないと思っていた。胆石、胆のう炎ではないということになると、この痛みは一体・・・。
実はこの日気付いた異常に便の色のそれがあった。痛み始めてからの便が黒っぽい緑色だったのだ。こんな色の便はめずらしかったので、何か関係があるかと思って、医師にもそのことを話した。(多分、これが下血とおもわれたのだろう)エコーを見たり、触診したりしていた医師は「胃潰瘍」の疑いがあるという。胃潰瘍でも肩に関連痛が起こることがあるそうだ。たしかに胃は強くはないが、胃潰瘍の痛みに気がつかない私ではない。そんな痛み、我慢できるはずがない。しかし他に原因が見つからない。医師は一晩入院して様子を見るか、それとも潰瘍を治してしまうくらい強い薬を入れて明日外来に来て胃カメラを飲むか、どちらにしますかと聞く。やっぱりタタのことが気になるから、できるものなら帰りたい。そこで、胃潰瘍の薬の投与が始まった。あいかわらず痛くて、薬の名前を見られなかったのが残念。でもこの薬が入ってくれば痛みもなくなるのかと、期待をしていたのだが、結果は変わらなかった。
点滴が終わると、どうぞお帰りくださいといわんばかりの態度だったが、どんな薬が出されるのか気になった。はじめの救急の医師が「その痛みをなんとかしてあげたいけど、原因がわからないからどんな鎮痛剤を出してあげたらいいのかわからないんです」と言っていた。私のスカートのポケットにはセデスが入っている。今日は1錠しか飲んでいないけど、診察の中でもセデスは飲むなと言われたので、今のこの脇腹と肩の痛み、それに加えてどんどんひどくなってくる頭痛を、このセデスで紛らわせるのをこらえているのだ。痛み止めは今日は投与されていない。今日もらって帰る薬は胃の薬だけだという。とてもじゃないけど、この痛みは我慢できない。鎮痛剤はお持ちじゃないんですかというけど、セデスをのんでいいのなら、今ここで飲みたいくらいだ。何とか鎮痛剤を出してもらった。
救急外来に来た時と、帰る時と、症状が一向に良くなっていない。普通は原因がわかったり、症状が治まったりして、それなりに感謝して支払いができるのだが。以前、私の不注意で手を切って傷口を縫ってもらった時は、ひたすら感謝してここを出た。外科医に比べると内科医は、謎解きをする探偵みたいなものだと思った。
朝からろくなものを食べていないので、お腹が空いているはずなのに、食欲はない。昼に食べるはずだったお弁当のご飯だけ食べて、もらった薬を飲む。胃薬が効くとは思わないが、鎮痛剤があるから少しは楽になるだろう。肩の痛みは暖めるに限る。その夜は何回もお風呂に入った。お風呂が一番いい薬だった。
寝るのがまた一苦労で、横になるより、上体を起こしていたほうが楽。枕やクッションを集めて寄りかかるようにして寝た。が、痛くてすぐに目が覚めてしまう。あまりよく眠れなかった。
実は、胃カメラはどうしようか悩んでいたのだ。だって、胃潰瘍のはずがないから。情報はすべて公開した方がいいという思いから、便の色の話をしたが、あれは下血の便ではないと、私は確信する。しかし、胃は弱い方だし、なにかあるかもしれないからと思い、翌日は胃カメラを飲むことになった。
胃カメラ初体験の私だったけど、鎮静剤を投与してもらったせいか、なんということはなかった。薬のせいでぼうっとしながら、ぼやけてうつるモニターの私の胃を見ていた。胃カメラでも異常は見つからなかった。3mmほどのポリープがあるそうだが「顔つきが悪くないので、だいじょうぶです」そうか、ハンサムなポリープ君なんだ。胃も荒れていないし、潰瘍もありませんとのこと。胆石でも胃潰瘍でもない。しかし私の右脇腹と肩はあいかわらず痛い。呼吸するたびに痛む。一体原因は何なのだろう。
すると医師は「胸膜炎」の可能性があるけど、じき治るでしょう。痛み止めを出しておきましょう。一応3週間後に予約を入れておくけど、治っていたら来なくてもいいです。なにかあったら、いつでも来てください。ということで、明らかな原因はわからず、鎮痛剤をもらって帰ってきたのだ。
新たに浮上した「胸膜炎」サーミーが言ってた「肋膜炎じゃないか」の肋膜炎と胸膜炎は同じものだった。そうか、肋膜炎か。連休頃から続いていた深呼吸ができない症状もそのためだったのかも。右脇腹だけが痛むのが、少し疑わしいが、なるほど。毎年起こる長期にわたる咳もこれの仕業か。
薬のせいか、自然治癒か、昨夜はだいぶ楽になって、横になって寝ることが出来た。今日もあいかわらず深呼吸はできないけれど、呼吸しても痛みは少なく、やっと生き返って人並みになった気がした。ところで、たまりにたまった家事をこなさなくちゃ。それから、タタとも遊ばなくちゃね。
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