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2006.03.12

紹介状をなくした猫

あるところにmeewという女の人がいた。彼女は長いこと桃太郎(モモ)という白黒猫を飼っていた。桃太郎はmeewが大好きで、meewも桃太郎が大好きだった。meewが夜遊びして午前様になっても、桃太郎はいつも寝ないで待っていた。いや、帰ってくる車の音を聞きつけて、いつも玄関まで出迎える猫だった。その桃太郎が腎臓の病気で亡くなったのは、忙しい日々の間にぽつんとできた休みの日のことだった。長いこと患っていたために、meewも覚悟はしていた。しかしそれはまだ先のことだと思っていた。食べ物はもちろん、水も受けつけなくなって、その覚悟がいよいよ現実のものとなった夜、桃太郎はmeewの腕の中で息を引き取った。

それから8年後、meewの家に小さな猫がやってきた。その小さな猫はmeewの家を住処と決めたようで、よそへ行こうとしない。meewの家の車のエンジンルームで夜を過ごすようになった。車に近づくと車の下から出てきて、哀れな声で鳴く。危なっかしくて仕方ない。出かける時は命がけだ、お互いに。meewが出かける時はサーミーが、サーミーが出かける時はmeewが、その小さな猫を押さえていた。困ったのは残った方が出かける時だ。その小さな子猫を遠くへ連れて行き急いで車を動かしたり、物置に閉じ込め車を遠くに止めてから物置の扉を開けに戻ったり、時には出かけるのを断念したり・・・。そんな日が19日間続いた。結局、meewたちはその小さな子猫を家に上げた。家には老猫の魚(トト)がいて、二匹はすぐに仲良しになれそうにはなかったが、最終的には仲良しになった。

小さな子猫は木天蓼(マタタビ)と名づけられ、タタと呼ばれるようになった。その行動は、どこかモモを思い起こさせるところがあった。ダンボールの箱が好きでいつまでもダンボールを噛み千切って遊んだり、サーミーよりmeewになついたり、布団の足元で寝たり・・・。モモと別れる時に、またどこかで会おうねと約束をしたmeewはこの猫が桃太郎かと思った。きっとそうだと思ったある夜、meewと寝ていたタタが突然おびえたように鳴き出した。布団の中に入って寝ることなどなかったのに、布団の中から出ようともしない。そんな時、玄関のドアにかかっている鈴の音がした。meewはわかった。またモモが来ていると。モモが亡くなってから何回か、不思議な現象があった。停電の日、ろうそくの火が自然に消えて、懐中電灯に明かりが灯ったり、玄関の鈴の音がしたり。そんな時、明らかにモモの存在をmeewは感じていた。また、モモが来たんだ。meewはそう思い、傍らでおびえているタタを見て、やはり、タタはモモではなかったんだとも思った。

タタはモモによく似た行動をとる。不思議だ。そんなmeewに、サーミーが言った。

「タタはモモから紹介状をもらったんだけど、来る途中になくしてしまったんだって。だから、この家に来たけど、入れなかったんだって。モモからいろいろ聞いていたから、いろんなことを知ってるんだってさ。だから、モモがやって来たあの日、怒られると思って怖くて布団から出られなかったんだって。」

meewは思った。そうだったのか。その紹介状はどうやって持っていたんだろう。くわえていて何かの拍子に落としたのかな。それとも首から下げていて、犬にでも追いかけられた時に落としてしまったのだろうか。多分聞いても、タタはきっと、もう覚えていないだろうな。

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コメント

すてきなお話ですね。心が温かくなりました。
meewさんちの猫たちは、とても愛されているのがよく分かります。ちょっと、羨ましいです。最近アレルギーがひどくなって、飼い猫にも満足に触れられない日々です。

投稿: hana | 2006.03.12 18:41

>hanaちゃん
hanaチャンのところは動物がたくさんいるから、アレルギー、大変ですね。私は毎晩顔と顔とくっつけて寝ていますが、こんなことできませんよね。お互いにつらいですね。でも、今は身体を大切にしてね。

投稿: meew | 2006.03.14 10:06

ネコは集会をする。
ネコは実は人間語がしゃべれるのに隠している。(ゆだんすると出てくる)
ネコはねこまたになる。
ネコは化けることができる。
・・・そんなネコですから、上のお話もおおいにありえるものと納得♪

投稿: チョムプー | 2006.03.14 20:24

>チョムプーさん
家族の好みをあらかじめ聞いて来たのではないかと思ってしまう猫なんです。そしたらサーミーがある日、こんな話を。

うちの猫はあまり人間の言葉を話さないんですが(イヤだ!くらいです)、クリちゃんはかなりの達人とか?

投稿: meew | 2006.03.15 16:08

モモちゃんは、幸せでしたね。
最後を大好きなmeewさんの腕の中で迎える事が出来て。
トトちゃん、タタちゃんの名前の由来、面白いですね。
親戚の家には耐えず猫がいます。
飼っている子が、小さい野良を連れてきて飼い猫になった事もありました。
タタちゃんもモモちゃんにスカウトされてきたんですね。

投稿: laximi | 2006.03.16 20:56

>laximi さん
うちの猫たちは初代の「チャウチャウ」「コロッケ」を除いて、みな漢字があるんですよ。↑のほかには「蒲公英(たんぽぽ)」がいます。愛称はもちろん、ポポです。

モモにスカウトされた小さかったタタも、大きくなり、ダイエットが必要かも・・・。

投稿: meew | 2006.03.16 23:40

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